1998年、尾道は向島にある、織機の大音量が響き渡る工場で、少しずつ織り上がっていく木綿の布を前に心躍る瞬間を迎えました。尾道はかつて海上交通の要衝で北前船の寄港地だった関係から、帆布が盛んに織られていました。帆布の用途はもともと文字通り、帆船の布として生まれましたが時代と共にテント、シート、作業服などにも使用されるようになり、主に戦前・戦中はその生産もかなり多く、70年前には尾道市内だけでも帆布工場が10社ほどありました。ところが戦後になると安くて軽い合成繊維に市場を奪われ、今では工場も市内で一箇所、全国でみても数えるほどに衰退してしまったのです。当時、尾道帆布の工場内には昭和初期~1970年代製の織機が並び、工場内には雪のように積もった白い埃と油のにおいが立ち込めていました。


この一言から工房尾道帆布の“今”へと繋がっていくこととなりました。自分たちのお小遣いから少しずつ持ち寄って帆布を買い、縫製の出来る人に頼んで初めて作ったのが小さなポーチ。クリーニング店の片隅で、ミシン1台からのスタートでした。とにかく必死に作り、商店街の3店舗に協力してもらって委託販売。北前船のシルエットをモデルにしたデザインのタグを作り、“工房尾道帆布”のブランドとして売り出したのが今から14年前。地元の人々の応援もあり、少しずつ売れ始め、商品の種類も徐々に増えていきました。

ちょうどその歩みだした頃に、旅行で尾道を訪れていた大学生とひょんなことから工場の話になり、話しはずむままにアートイベント「尾道帆布展」の開催が決定。帆布の普及を目的として、山の手の民家に泊まりこみ、市内の廃校になった小学校をアトリエに1ヶ月間作品制作をし、一般公開する展示でした。全国の美大生の作品発表の場としても大いに意味のある運動となりました。以降、市内の商店街や島の廃校、海辺の倉庫など会場を転々としながら、毎年恒例のイベントとして活動を支援しています。

2002年4月、商店街内の一角に念願のお店を開店。6坪のこぢんまりとした店内に、作業スペースと陳列棚を設置。縫いあがったそばから並べる、まさに手作り感漂うお店でした。2003年6月、NPO法人として生まれ変わり、より地域に貢献できる団体を目指す決意をしました。若手作家や学生の活動支援、尾道市内での雇用拡大、地域の活性化などを目的としての再スタートです。2004年、現在の店舗に引越し。販売スペースの充実はもちろん、作業場の拡大、工場で実際に使っていた織りの道具などを展示する資料室を設け、2階はギャラリーとして一般利用してもらえるスペースにしました。現在、年間約2万名ほどのお客様に足を運んでいただいています。

あのスタートの頃の気持ちをずっと忘れず、より良い物作りを目指していくことが、今の私たちの目標です。

NPO法人 工房尾道帆布 会長 木織雅子

工房尾道帆布 社員一同

団体名 NPO法人 工房尾道帆布
住所 〒722-0035広島県尾道市土堂2-1-16
TEL/FAX 0848-24-0807/0848-36-6700
mail info@onomichihanpu.jp
URL 【店舗】www.onomichihanpu.jp【通販】www.onomichihanpu.jp/shop
設立 2003年6月 NPO法人化
代表者 島田 美鈴(理事長)
法人の目的 尾道の伝統産品であった帆布を文化・芸術として普及するための事業を行うことで、文化・芸術の振興、まちづくりの推進、環境の保全など、地域社会全体の利益の増進に寄与することを目的としています。
1999年 広島県中小企業家同友会尾道支部女性部が尾道に残る帆布工場を知り、帆布を使った服飾小物の製作を手探りで始める。
2000年 第1回尾道帆布展を廃校になった筒湯小学校で開催。
2001年 尾道の商店街に小さな工房兼店舗を開設。第2回尾道帆布展を百島で開催。
2002年 第3回尾道帆布展を尾道商店街空き店舗で開催。
2003年 まちづくり活動を推進するため協力者を広く募り、NPO法人化。第4回尾道帆布展を百島で開催。
2004年
4月 みなと祭り「ええじゃんSANSAがり」用のゼッケンを受注製作。
5月 沖縄の染め 紅型染作家と交流。
7月 しまなみプロデュースコンペに参加。しまなみ海道活性化企画を発表。最優秀として金賞受賞。小中学生18名を対象に、工房で帆布を使った体験学習を開催。
8月 地元作家12名が参加する作品展『不定形興行』に協賛し、出品したワークショップ開催。小学生、観光客を対象に帆布を使った体験学習。
10月 しまなみ海道活性化企画を実施。講話会にて小学生を対象に、帆布に関する話をした。
11月 帆布資料室を開設し、織機、整経機、ビデオモニターなどを展示し、帆布の理解・普及に努めた。
2005年
2月 店舗2階に「アートスペース帆」を開設。尾道大学芸術学部学生の卒業制作展に会場を提供。
5月 東急ハンズにて、実演販売とワークショップ。
6月 商店街に大漁旗の展示、港町;尾道を演出・アピール。
8月 第5回尾道帆布展開催。長江小学校・小樽小学校 交流会&ワークショップ。

第2回しまなみコンペ 参加 特別賞受賞。

9月 (福)若菜 すが野の里にて、天然染料の研究、及び、ワークショップ(対象者;通所者、職員)。
10月 JICA研修 ワークショップ16名。尾道大学デザインコース学生による「尾道活性化企画」発表会 共催。

福山走島中学生 ワークショップ4名

11月 小樽小学校 教育委員会職員 ワークショップ7名しまなみ大学 ワークショップ32名

東京「夢ぷらざ」出品。

2006年
3月 しまなみワークショップ 20名。
4月 福屋ゲストルームにて、新作バッグを発表。
8月 尾道帆布展 ワークショップ「龍の国 尾道」。横浜のデパートで帆布のPR。
9月 柿渋講習会(一實ばり)。
10月 JICA研修 ワークショップ12名。
11月 しまなみ大学 ワークショップ 親子 30名。
2007年
2月 土堂小学校 ワークショップサテライト授業。広島東洋カープとのコラボレーション、レトロショルダー製作。
6月 商店街土曜夜店にて毎週、ワークショップ開催。
8月 尾道帆布展開催;西御所 県営上屋倉庫(みなとオアシス尾道リレーイベント協賛)。
9月 日比埼小学校にてワークショップ開催。中学生の職場体験受け入れ;日比埼中学校より2名、5日間。
10月 JICA研修 ワークショップ18名。
11月 しまなみ大学 ワークショップ 親子 30名。
2008年
1月 栗原小学校にてワークショップ開催。
2月 東京夢てらす「まるごと尾道フェア」参加。中学生の職場体験受け入れ;向島中学校より2名、5日間。

職場体験受け入れ;穴吹国際ビジネス専門学校より1名。

3月 帆布と古紙を用いた100%再生紙の帆布の紙を企画・開発し、販売開始。オーガニックコットンの普及活動開始。
2008年 綿々サミット開催。今治市のタオル業者や織物専門家などとしまなみ街道ならではの商品開発への意見討論を行う。「しまなみ綿海道」を促進。しまなみ海道に綿を植える運動開始。
2009年 地域再生事業受賞。サイクリング用バッグ開発。
2010年 女性のチャレンジ賞特別部門賞。内閣府特命担当大臣表彰。
2011年 東南アジア有望指導者との交流。(カンボジア・ベトナム・ラオス・ミャンマー)「にぎわいの創出」中国経済産業局長との座談会参加。